- 旧法借地権から新法に切り替えるか迷っている
- 借りる側に有利なのは旧法と新法のどっち?
- 旧法から新法へ切り替えるメリット・デメリットを知りたい

旧法借地権は何度更新しても、旧法借地権がそのまま適用されますが、正しい手続きを行えば新法へ切り替えることが可能です。しかし旧法から新法に切り替えることで得られるメリット・デメリットは、借りる側(借地人)と貸す側(地主)の立場によって異なります。
本記事では、旧法から新法の借地権へ切り替える方法、新法に切り替える際の借りる側(借地人)のメリット・デメリット、貸す側(地主)のメリット・デメリットについて解説しています。
記事監修者情報

株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士
不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。詳細はプロフィールをご覧ください。
【確認】現在使われている借地権は大きく3種類
1992年7月31日までに結んだ借地契約には旧借地法が適用され、1992年8月1日以降に結ばれた借地契約には借地借家法が適用されています。

このように、1992年7月31日以前に借地契約が結ばれた土地には旧法借地権が設定されているため、現在でも旧法借地権と新法借地権(普通借地権・定期借地権)の土地が混在しています。
また、契約時に旧法が適用された借地契約は、何度更新しても旧法が適用され、自動的に新法(借地借家法)に切り替わることはありません。
旧法から新法の借地権に切り替える方法

旧法から新法の借地権に切り替えるにはどうしたらいいの…?
旧法から新法の借地権に切り替えるためには、相手方の合意を得た上で、旧法に基づく借地契約を解除し、新法に基づいて再度契約を締結する必要があります。
何度更新をしても旧法は旧法のままであるため、まずは既存の契約を解除しなければなりません。
【借りる側(借地人)】旧法から新法へ切り替えるメリット・デメリット
借りる側(借地人)は、たとえ地主から「旧法から新法へ切り替えたい」と要望があっても、新法へは切り替えずに旧法のまま更新することをお勧めします。
なぜなら旧法借地権では、経済的に不利で立場が弱い借りる側(借地人)の権利が過剰に保護されているためです。
ただし新法の中でも「定期借地権」ではなく「普通借地権」への切り替えならば、旧法借地権と大差はありません。そのあたりも踏まえ、具体的にメリットとデメリットを説明します。
借りる側(借地人)のメリット ※ほぼ無し
普通借地権ならば、旧法借地権と同様の保護が受けられる


先述しましたが、借地人にとって旧法借地権から新法に切り替えるメリットはありません。
ただし、どうしても新法に切り替えなければならない場合、新法の中でも定期借地権ではなく普通借地権ならば、旧法と同様の保護を受けることができます。
普通借地権は旧法借地権の性質を引き継いでおり、2つの借地権の違いは「建物構造による区別の有無」と「存続期間の長さ」のみです。契約を半永久的に更新できる点や地主は正当事由無しに拒否することができない点は新法でも同様です。



もしも地主から「どうしても新法への切り替えをしたい」と強い要望があった場合は、普通借地権での再契約を提案してみましょう。
借りる側(借地人)のデメリット
契約の解除&再度契約の手間が掛かる
定期借地権は更新ができない


借りる側(借地人)にとっては、新法へ切り替えるメリットが無い上に契約書などを取り交わさなければならず、非常に面倒です。
さらに新法の定期借地権で契約を結び直してしまうと、旧法では可能だった「契約の更新」ができなくなってしまいます。半永久的にその土地を借りたいと考えている人は定期借地権は避けたほうがいいでしょう。
【比較】契約満了時の契約更新
旧法借地権 | 更新できる |
普通借地権 | 更新できる |
定期借地権 | 更新できない |
【貸す側(地主)】旧法から新法へ切り替えるメリット・デメリット
借地人からの合意を得ることができるのならば、貸す側(地主)は旧法から新法の定期借地権へ切り替えることをお勧めします。
なぜなら新法(借地借家法)で定められている定期借地権には、地主の権利を保護する規定が多く定められているためです。地主が旧法から新法へ切り替えることによる具体的なメリットとデメリットも把握しておきましょう。
貸す側(地主)のメリット
確実に土地を取り返すことができる
契約満了時に建物を買い取らなくてよい


旧法借地権では「土地を貸したら二度と返ってこない」と言われるほど、地主が土地を取り戻すことが困難でしたが、新法の定期借地権では、更新ができないため、契約時に定めた契約期間が終わると必ず土地が返還されます。
また、旧法借地権で定められていた建物買取請求権(借地人が地主に対して、借地上の建物を買い取るように請求できる権利)も新法では無くなりました。



地主は、旧法よりも新法の定期借地権の方が安心して土地を貸すことができます。
貸す側(地主)のデメリット
合意を得るのが難しくトラブルが起きやすい
普通借地権は地主に不利な内容が多い


後ほど詳しく説明しますが、大半の借りる側(借地人)は旧法のまま更新することを希望するため、旧法から新法への切り替えの合意を得ることは難しいです。更新時に借地人と揉めると、最悪の場合は契約が解消となってしまうため、注意してください。
また新法の借地借家法には「普通借地権」と「定期借地権」の2種類の借地権がありますが、「普通借地権」で契約を結び直しても、旧法から新法へ切り替えた意味が無くなってしまいます。普通借地権は旧法借地権を基にして作られてているため、地主に不利な規制が多くあります。地主に有利な借地権は普通借地権ではなく定期借地権であることも押さえておきましょう。
定期借地権」 地主に有利な借地権は新法の中でも「普通借地権」ではなく「
まとめ
- 旧法で結んだ借地契約は何度更新しても旧法のまま
- 旧法から新法へ切り替えるには、旧法に基づく借地契約を解除し、新法に基づいて再度契約を締結する
▶旧法から新法へ切り替えるメリット・デメリット
メリット | デメリット | |
---|---|---|
![]() ![]() 借りる側 (借地人) | ・定期借地権ではなく普通借地権ならば、旧法借地権と同様の保護を受けられる | ・定期借地権では更新することができない | ・旧法の契約を解除し、再度契約を結び直すため手間が掛かる
![]() ![]() 貸す側 (地主) | ・契約満了時に建物を買い取らなくてよい | ・確実に土地を取り戻すことができる・定期借地権ではなく普通借地権で契約すると、地主に不利な内容が多い | ・借りる側(借地人)の合意を得るのが難しく、トラブルが起きやすい
記事監修者情報


株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士
不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。詳細はプロフィールをご覧ください。