- 借地借家法は何の法律?
- 普通借地権と定期借地権の違いは?
- 定期借地権の使い分けを知りたい!

借地借家法は借地(借地権)と借家について定めた法律で、借地権はさらに普通借地権と定期借地権に分けることができます。用途に応じて最適な借地契約を結ぶ必要があるため、各借地権の特徴を把握しておくことが大切です。
本記事では、借地借家法とはそもそも何か、普通借地権と定期借地権について、さらに3種類の定期借地権(「一般定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」「事業用定期借地権」)について解説しています。
本記事はあくまでも借地借家法の解説となります。旧法借地権について詳しく知りたい方は旧法借地権(借地法)とは?の記事をご覧ください。

自身の契約が旧法・新法どちらが適用されているかわからない方は、まず契約書で契約締結日を確認してください。契約締結日が1992年8月1日以降の場合は借地借家法が適用されています。
この記事に関係する人
- 1992年8月1日以降に借地契約をした人
- 旧借地法で締結した契約の期限が迫っており、借地借家法を適用して更新するかどうか迷っている人
記事監修者情報


株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士
不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。詳細はプロフィールをご覧ください。
借地借家法は借地(借地権)と借家について定めた法律


借地借家法とは、土地と建物の賃貸借契約について定めた法律です。旧借地法と旧借地法の廃止後、1992年8月1日に施行され、現在も適用されています。
借地借家法は「借地(借地権)」と「借家」の2つから構成されており、借地借家法について第一章第一条(趣旨)によると以下のように定義されています。
この法律は、❶建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに❷建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。
平成三年法律第九十号 借地借家法
▼要約すると以下のようにまとめることができます。
- ”建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等”…借地権について
- ”建物の賃貸借の契約の更新、効力等”…建物の賃貸借契約について
このように借地借家法では借地権と建物の賃貸借契約の2つについて定められています。
借地権とは?


借地権とは、建物を建てるために土地の所有者から土地を借りる権利です。土地を借りているため、借地人は毎年または毎月土地の使用料(地代)を支払うことで土地を使用する権利を得ることができます。
また、借地人(借りる側)が借地に建物を建てるためには、地主の許可を取る必要があります。
地主(借地権設定者) | 土地を貸す側 | 土地を所有する権利を持つ |
借主(借地人) | 土地を借りる側 | 土地を使用する権利を持つ ※建物を建てた場合は建物の所有者にもなる |
借家とは?
借家とは、家を借りることもしくは借りている家のことです。住居用の賃貸マンションやアパート、事業用の賃貸ビルなどが該当します。
借地借家法では、一般的な貸借契約である普通借家契約と比較的短い契約期間が定められている定期借家契約の2種類に分かれています。
なぜ借地借家法が生まれたのか?



旧借地法や旧借家法に代わって、なぜ借地借家法が生まれたの?
借地借家法は、借りる側(借地人)と貸す側(賃貸人/地主)の双方の保護を行い、立場の差を埋めるために誕生しました。
借地借家法が生まれた1992年8月1日以前は、賃貸借に関わる法律には旧借地法や借家法が適用されていましたが、借りる側(借地人)の保護を過剰に行う法律であったため、貸す側(賃貸人/地主)が盛んに土地を貸さなくなってしまいました。
そこで土地の有効活用を促すため、借地借家法では旧借地法と旧借家法を統合し、貸す側(賃貸人/地主)に配慮した定期借地権の規定が加えられました。
旧法借地権では、どれくらい借地人が有利だった?
旧法借地権では、借りる側(借地人)は貸す側(賃貸人/地主)に対して、「契約の更新」「建物再築による期間の延長」「期間満了時の建物買取」の3つを求めることができ、さらに貸す側は正当事由になしにこれらの請求を拒否することができませんでした。
- 契約の更新:契約期間満了時でも契約は更新され、借りる側は半永久的に土地を利用できる
- 建物再築による期間の延長:契約期間の途中で新たに建物を再築した場合、建物の耐用年数に応じて契約期間が延長される
- 契約満了時の建物買取:借地上の建物を地主に買い取るように請求することができ、地主に拒否権は無い
このように旧法借地権では、地主が正当事由なしに契約の更新や建物の買取を拒絶することができず、「土地を貸したら二度と返ってこない」と言われるほど、貸す側(賃貸人/地主)にとって不利な法律でした。
借地権は2種類(普通借地権・定期借地権)
旧借地法で定められていた借地権は1種類でしたが、借地借家法では「普通借地権」と「定期借地権」の2種類の借地権が定められています。旧法借地権の特徴が引き継がれているのが「普通借地権」、地主を保護するために新たに誕生したのが「定期借地権」です。
- 普通借地権
- 定期借地権
❶ 普通借地権


普通借地権は旧法借地権をベースとして作られており、旧法から引き継がれた特徴が多くあります。
旧法借地権との大きな違いは、建物構造による区別が無くなったことです。※旧法借地権について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
存続期間 | 期間を定めている場合 | 30年以上 |
期間を定めていない場合 | 30年とする | |
更新後の存続期間 | 1回目 :20年 2回目以降:10年 ※当事者間の合意があれば、上記以上の期間でも可 | |
契約方法 | 定めなし(口頭でも可) | |
利用目的 | 自由 | |
契約の終了 | ただし契約期間満了時に正当事由が必要 |
普通借地権の存続期間は最低30年、つまり30年以上の期間を定めなければなりません。契約時に期間を定めていない場合も30年となります。
旧法借地権と同様に、契約の更新が可能で、地主から契約の更新を拒絶するためには正当事由が必要です。借地権設定後の初回の更新のみ20年、2回目以降は10年の存続期間が定められています。
また普通借地権では土地の利用目的に制限がなく、住居用としても事業用としても土地を借りることができます。
❷ 定期借地権
定期借地権は借地借家法で新たに誕生した法律で、「一般定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」「事業用定期借地権」の3つがあります。
旧法借地権や普通借地権との大きな違いは更新ができないという点です。
① 一般定期 | ② 建物譲渡特約付 | ③ 事業用定期 | |
---|---|---|---|
存続期間 | 50年以上 | 30年以上 | 10年以上50年未満 |
契約方法 | 公正証書等の書面 | 定めなし(口頭でも可) | 公正証書 |
利用目的 | 自由 | 自由 | 事業用 (居住用不可) |
契約期間満了時 | 更地にして返還 | 建物譲渡 | 更地にして返還 |
建物買取請求権 | なし | あり | なし |
契約の更新 | 不可 | 不可 | 不可 |
種類ごとに存続期間や契約方法、契約期間満了時の対応方法が異なります。特に、建物買取請求権が付与されていない① 一般定期借地権と③事業用定期借地権の場合は、借りる側(借地人)が自身で建物を取り壊し、更地の状態にして地主に返還する必要があります。
Q.事業用目的で30年以上50年未満の期間で契約した場合、②建物譲渡特約付借地権と③事業用定期借地権の併用はできる?
A. ②建物譲渡特約付借地権と③事業用定期借地権の併用は可能です。その際は、必ず公正証書で契約をしなければなりません。



契約の更新が無いことや買取請求権の有無を選択できることから、定期借地権は貸す側に優しい法律です。
【活用例】どのようなケースで定期借地権が適用されているのか?




① 一般定期借地権 | 分譲マンション |
② 建物譲渡特約付借地権 | ほとんど利用無し |
③ 事業用定期借地権 | コンビニ・スーパー・ドラッグストア・飲食店など |
1つ目の一般定期借地権は主に分譲マンションで使われます。借地権付の分譲マンションは通常(借地権無し)の分譲マンションと比べて、安く購入することができます。一般定期借地権は3つの中で最も存続期間が長いため、分譲マンションなどの住居用として活用されています。
2つ目の建物譲渡特約付借地権は、契約満了時に地主が借地上の建物を買い取らなければいけない旨が定められており、地主にとってほとんどメリットが無いことから、利用されていないのが実態です。
3つ目の事業用定期借地権は、コンビニやスーパー、ドラッグストアや飲食店などで利用されています。3つの中で最も契約期間が短いことや利用目的が事業用であることから、需要が多くあります。最も利用されているのも事業用定期借地権です。
よくある質問
- 旧借地法と借地借家法のどちらが適用されているのか見分ける方法は?
-
契約書で契約締結日を確認し、契約締結日が1992年8月1日より前の場合は旧借地法。1992年8月1日以降の場合は借地借家法が適用されています。
- 借地上では、建物の建て替えや再築はできるの?
-
地主の承諾を得れば可能です。また地主からの承諾を得れない場合でも、代わりに裁判所から承諾を得ることができれば、建て替えや再築が可能です。
- 借地契約の更新はできるの?
-
旧法借地権、普通借地権(借地借家法)であれば可能です。定期借地権の場合は更新ができないため、再度契約を結び直す必要があります。
まとめ
- 借地借家法は土地と建物の賃貸借契約について定めた法律
- 1992年8月1日に施行され、現在も適用されている
- 旧借地法では借りる側(借地人)を過剰に保護しすぎていたため、借地借家法では借りる側(借地人)と貸す側(賃貸人/地主)の双方の保護を行った
- 借地借家法で定められている借地権は「普通借地権」と「定期借地権」の2種類。さらに定期借地権は「一般定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」「事業用定期借地権」の3種類に分けることができる
記事監修者情報


株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士
不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。詳細はプロフィールをご覧ください。