- 旧法借地権の土地を相続したので旧法について知りたい
- 旧法借地権の押さえておくべき特徴は?
- 更新時には、旧法新法どちらが適用されるの?

1992年8月に借地借家法が施行されて以降、土地の賃貸借契約には借地借家法が適用されていますが、古くから所有している土地や相続した土地では借地法(旧法借地権)が適用されていることも珍しくありません。
そこで本記事では、わかりにくい借地法(旧法借地権)の概要から生まれた背景、抑えておくべきポイントまでわかりやすく解説いたします。
本記事はあくまでも旧法借地権の解説となります。借地借家法について知りたい方は借地借家法(普通借地権・定期借地権)とは?の記事をご覧ください。

自身の契約が旧法・新法どちらが適用されているかわからない方は、まず契約書で契約締結日を確認してください。契約締結日が1992年7月31日以前の場合は旧借地法が適用されています。
この記事に関係する人
- 1992年7月31日以前に借地契約をした人
- 旧法借地権の付いた土地を相続した人
- 旧借地法で締結した契約の期限が迫っており、旧法をそのまま適用するか迷っている人
記事監修者情報


株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士
不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。詳細はプロフィールをご覧ください。
借地法(旧法借地権)とは?
借地法(旧法借地権)とは、土地の賃貸借契約について定めた法律です。借地法は1921年8月1日に施行され、その後2度の改正を経て、1992年7月31日まで適用されていました。
借地法(旧法借地権)が生まれた背景
旧法借地権は、借りる側(借地人)を保護するために作られました。
旧法借地権が成立する以前、賃貸借契約についての規定は民法上の「建物保護二関スル法律」によって定められていました。
建物保護二関スル法律(略称:建物保護法)では、土地の借地権の登記が無くとも建物の登記があれば、第三者に権利を主張することができる、つまり土地を明け渡す必要がないことを定めた法律です。1909年(明治42年)5月1日に施行され、借地借家法の制定(1991年)ともに廃止されました。
しかし、建物保護二関スル法律は借りる側(借地人)が貸す側(賃貸人/地主)よりも立場が弱い点や経済的にも不利である点が配慮されていませんでした。そこで借りる側を保護するために、旧法借地権が誕生しました。
2度の改正で地主が不利になっていった
借地法は1921年の施行後、2度の改正がありました。
(明治42年) | 1909年5月1日民法上で建物保護二関スル法律(建物保護法)が施行される |
(大正10年) | 1921年8月1日借地法が借家法とともに施行される |
(昭和16年) | 1941年借地法改正①:賃貸人(地主)からの契約解除には「※正当事由」が必要となった ※正当事由:賃貸人(地主)が解約の申し入れをする際に必要とされる理由。具体的に何が正当事由になるのかは裁判所の判断。 |
(昭和41年) | 1966年借地法改正②:売買や改築をする際に、地主の承諾が得られない場合は裁判所が代わりに承諾できるようになった |
(平成2年) | 1991年建物保護二関スル法律(建物保護法)が廃止 |
(平和3年) | 1992年8月1日借地借家法が施行される |
1度目の改正では、契約満了時でも賃貸人(地主)は正当事由無しでは更新を拒絶することができなくなり、借りる側の保護が強まりました。
2度目の改正では、地主の承諾が得られない場合に、地主に代わって裁判所による承諾が認められるようになり、借りる側の土地活用の幅が広がりました。



2度の改正によって「土地を貸したら二度と返ってこない」と言われるほど、地主が土地を取り戻すことが非常に難しくなりました。
借地法(旧法借地権)の3つの特徴


「借地法は借りる側(借地人)を保護するために誕生した」と先述しましたが、具体的に借りる側はどのようなことができるようになったのでしょうか。
借りる側(借地人)は貸す側(賃貸人/地主)に対して、「契約の更新」「建物再築による期間の延長」「期間満了時の建物買取」の3つを求めることができるようになりました。
そして貸す側(賃貸人/地主)は、正当事由なしにこれらの請求を拒否することができません。
❶ 契約の更新
旧法借地権では、契約時に定めた契約期間が満了した場合でも、原則契約は更新されます。
※契約の更新時には一定の更新料が発生
更新料については借地権の更新料とは?支払いが必要なケースと更新料の相場で紹介しています。
つまり借りる側(借地人)は希望する限り、半永久的に土地を利用することができます。
当事者間で同意があったとしても、法律で定められた存続期間よりも短い期間で契約を定めることはできません。
❷ 建物再築による期間の延長


建物再築による期間の延長とは、残存期間を超える建物を再築した場合において、存続期間が延長されることです。
再築した「建物の耐用年数」が「残存期間」よりも長くなる(建物の耐用年数>残存期間)と判断されると、堅固建物は30年、非堅固建物は20年の期間が延長されます。
ただし、「建物と耐用年数」と「残存期間」の長さは相対的・経験的に判断されます。具体的な年数で比較されるわけではありません。
❸ 契約満了時の建物買取請求


契約満了時の建物買取請求とは、借地上の建物を※時価で土地所有者(地主)に買い取るように請求できる権利です。※時価:その建物を売ろうとした時点で、売却できるであろう価格
建物を取り壊す際には「取り壊し費用」が発生しますが、建物の所有者(土地を借りている側)にとっては大きな負担です。そこで土地を借りている側の負担を減らすべく、建物買取請求ができるようになりました。
「請求」とありますが、地主に拒否する権利はありません。建物の所有権が借地人から地主へ移転すると同時に、地主には支払い義務が発生します。
このように建物買取請求権は借りる側(借地人)に有利な権利である一方で、貸す側である地主は必ず建物を買い取らなければならず、地主にとっては不利なものです。
そこで両者の立場を公平にするべく、1992年の借地借家法では建物買取請求権を認めない旨の特約が認められるようになりました。
借地法(旧法借地権)の存続期間
土地を借りて建物を建てる借地権の契約を結ぶ際は、あらかじめ契約期間を定めることがほとんどです。
存続期間とは、権利が有効に存続している期間、つまり契約期間のことです。
旧法借地権では建物を堅固建物(鉄骨造・鉄筋コンクリート)と非堅固建物(木造)に2種類に区分しており、建物構造によって異なる存続期間を定めています。
契約時の存続期間
契約時に | 堅固建物 (鉄骨造・鉄筋コンクリート) | 非堅固建物 (木造) | 建物が朽廃した際 |
---|---|---|---|
期間を定めている場合 | 30年以上 | 20年以上 | 契約続行(=再築可能) |
期間を定めていない場合 | 60年とする | 30年とする | 自動的に契約終了 |
契約時に存続期間を定める場合は、堅固建物は最低でも30年、非堅固建物は最低でも20年、またはそれ以上の期間を定める必要がありました。
また、一度期間を定めると、たとえ建物が朽廃しても契約満了までは権利が続行します。
一方で、契約時に存続期間を定めない場合は、堅固建物は60年、非堅固建物は30年の存続期間とみなされますが、建物が朽廃した際は自動的に契約が終了します。
借地契約の際は期間を定めることが一般的ですが、最初に建てた建物が老朽化した後も再築する予定が無い場合は、期間を定めずに契約することがあります。あらかじめ建物の再築予定が無い場合、自動的に借地権が消滅したほうが借りる側にとって都合がいいためです。
契約時は旧借地法、次の更新は旧法新法どちらが適用されるのか?
賃貸借契約に関する法律は、1992年7月31日以前は旧法借地権(借地法)、その後は現在に至るまで借地借家法が適用されています。そのため、現在では旧法借地権と新法借地権の土地が混在しています。
では、契約時は旧借地法が適用されていたが、借地借家法が適用されてから契約を更新する場合は、旧法新法のどちらが適用されるのでしょうか?
旧法借地権が適用されている契約(1992年7月31日以前)は、何度更新しても原則、旧法借地権がそのまま適用されます。
ただし、当事者間で借地借家法を適用する旨の合意があれば、切り替えることも可能です。
旧法 | 旧法借地権(借地法) | 借りる側(借地人)を過剰に保護されている |
新法 | 借地借家法 | 借りる側(借地人)と貸す側(賃貸人/地主)が公平な立場に |



借りる側にとっては、旧法借地権を適用したほうが有利なことが多く、合意を得て借地借家法へ切り替えることは稀なケースです。
まとめ
- 旧法借地権(借地法)は1921年8月1日~1992年7月31日まで適用されていた
- 借りる側(借地人)を保護する目的で誕生
- 借りる側(借地人)は貸す側(賃貸人/地主)に対して「契約の更新」「建物再築による期間の延長」「期間満了時の建物買取」を求めることができる。※地主は正当事由なしにこれらの請求を拒否することができない
- 旧法借地権が適用されている契約は原則旧法借地権がそのまま適用される。ただし当事者間で合意があれば、借地借家法に切り替えることも可能
記事監修者情報


株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士
不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。詳細はプロフィールをご覧ください。