- 法定更新と合意更新ってそもそも何?
- 法定更新と合意更新の違いは?
- 法定更新によるリスクやトラブルが知りたい!

借家・借地契約の更新には、法定更新と合意更新の2種類があり、それぞれ契約内容や期間などの規定が異なります。知識不足で思わぬトラブルに巻き込まれないよう、更新の規定や注意事項を確認しておきましょう。
本記事では、そもそも法定更新・合意更新とは何か、2つの更新の違い、法定更新が適用された際の注意事項やトラブルまで解説します。
記事監修者情報

株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士
不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。詳細はプロフィールをご覧ください。
【借地権】法定更新・合意更新とは?
借家・借地契約の更新には、法定更新と合意更新の2種類あり、契約内容や期間などの細かい規定が異なります。まずは、どのような場合に法定更新または合意更新が適用されるのかを説明します。
どのような場合、法定更新または合意更新となるのか?

契約期間満了の1年前から6か月前までに更新拒絶の通知がなく、かつ契約終了までに借主と借主の間で協議がない場合、法定更新となります。
一方、契約終了までに当事者間で協議があった場合には合意更新となります。

細かい所まで理解する必要はありません。大まかな概要を把握し、詳しくは専門家に相談しましょう。
【参考】法定更新と合意更新の区別 YES/NOフローチャート
法定更新と合意更新について、YES/NOフローチャートを作成しましたので、参考にしてください。


法定更新とは?
法定更新とは、これまでの契約内容と同じ条件で自動的に更新されることです。
法定更新の場合、契約条件はそのまま引き継がれますが、契約期間は引き継がれません。更新後は「期間の定めのない契約(更新が無い契約)」となります。
契約条件 | 同一条件でそのまま引き継がれる |
契約期間 | 引き継がれない、期間の定め無し |
合意更新とは?
合意更新とは、貸主・借主の双方の合意によって契約を更新することです。
合意更新の場合、当事者間の話し合いにより、契約条件や期間などを自由に変更することができます。しかし、借地借家法の規定に反する特約で借主に不利なものは無効となります。
【項目別に比較】法定更新と合意更新の違い
法定更新と合意更新では、詳細な規定が異なるため、以下の表で整理しました。
法定更新 | 合意更新 | |
(契約満了前)更新拒絶の通知 | なし | あり |
更新前後の契約内容 | 同じ | 変更可能 |
期間の定め | なし | 自由に設定可能 |
強行規定に反する特約 | 無効 | 無効 |
更新料 | なし | あり |
法定更新では、同一の契約内容でそのまま引き継がれますが、合意更新では、当事者間の協議により契約内容を変更することができます。
また、法定更新がなされると、契約期間の定めが無くなるため、原則として更新料が一切なくなります。つまり、法定更新をすると、貸主は借主から更新料を取ることができなくなってしまいます。法定更新には、貸主にとって注意すべき点が他にもありますので、具体的に見ていきましょう。
貸主(地主)は「法定更新」に要注意!3つの注意点


- 今までと同じ契約内容で良いから、自動更新でいいや…
- 更新のために、わざわざ借主と話し合うのも面倒…
以上のように、借主との更新に関する話し合いを面倒に感じ、更新時に協議を行わない人が多くいます。しかし、何も知らずに法定更新をすると、貸主(地主)は損をする可能性があります。
法定更新に関する3つの注意点を説明します。


更新料を請求できない
法定更新の場合、原則として貸主は借主に更新料を請求することができません。
ただし、法定更新をしても更新料を請求したい場合は、予め契約書に「法定更新の場合でも更新料を支払う」旨を定めておく必要があります。少しでも不明瞭な場合は、規約が無効となってしまう可能性があるため、当事者間で相違の無いように定めておきましょう。
期間の定めのない契約になってしまう
先述した通り、法定更新では契約条件はそのまま引き継がれる一方で契約期間は引き継がれず、「期間の定めのない契約」となります。
例えば「数年後には賃貸借を辞めて、一括で売却しよう」「借家が古くなってきたので建て替えをしたい」と思っていても、契約期間の定めが無いため、借主にすぐに退去してもらうことができません。
このように法定更新により、当初の不動産運用計画が狂ってしまうことが多々あります。
法定更新後は解約がしにくい
法定更新後の解約は、貸主と借主の合意解約または一方からの解約申し入れによって成立します。
契約期間の定めが無い場合、借主からは自由に解約の申し入れをすることができますが、貸主からの解約の申し入れには正当事由が必要です。※正当事由:賃貸借契約の更新拒絶や解約を申し入れるために必要な条件
貸主の解約したいタイミングで借主の同意を得ることができるとは限らず、貸主都合での解約は難しいです。
まとめ
- 法定更新:これまでの契約内容と同じ条件で自動的に更新されること
- 合意更新:貸主・借主の双方の合意によって契約を更新すること
- 貸主(地主)側は法定更新により、損する可能性がある。(以下3つの注意点)
- 更新料を請求できない
- 期間の定めのない契約になってしまう
- 法定更新後は解約がしにくい
記事監修者情報


株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士
不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。詳細はプロフィールをご覧ください。