- 普通借地権と定期借地権の特徴を押さえておきたい
- 普通借地権と定期借地権の違いは?
- 各借地権が設定されるのはどんなケース?

借地権とは、建物を建てるために土地の所有者から土地を借りる権利で、借地人は土地の使用料(地代)を支払うことで土地を使用する権利を得ることができます。
借地権は借地借家法という法律で定められており、「普通借地権」と「定期借地権」の2つに分けることができます。各借地権は性質が大きく異なるため、それぞれの特徴や違いを把握しておくことが大切です。
本記事では、普通借地権と定期借地権(一般定期借地権・建物譲渡特約付借地権・事業用定期借地権)の特徴や違い、各借地権が設定される実際のケースについて解説しています。
記事監修者情報

株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士
不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。詳細はプロフィールをご覧ください。
【確認】借地借家法で定められている借地権は2種類

借地権には「普通借地権」と「定期借地権」の2種類があり、「定期借地権」はさらに3種類に分かれます。
普通借地権は旧法借地権の性質を引き継いでおり、借りる側(借地人)の権利が過剰に保護されていることが特徴です。普通借地権では、契約の更新が可能で、地主から更新を拒絶するには正当事由が必要になります。
※旧法借地権について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
一方の定期借地権は借地借家法で新たに誕生し、借りる側と貸す側の双方の権利を平等に保護しています。「一般定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」「事業用定期借地権」の3種類があり、全ての借地権が契約の更新ができないことが特徴です。
普通借地権と定期借地権の違いは大きく3つ
普通借地権は旧法借地権の性質を引き継いでおり、定期借地権は借地借家法で新たに誕生したと先述しましたが、2つの借地権では具体的に何が異なるのでしょうか。
普通借地権と定期借地権では、以下3つの点で大きな違いがあります。
- 契約の更新ができるかできないか
- 権利金が発生するかしないか
- 地代の相場・借地権の価値
❶ 契約の更新できるかできないか

普通借地権は更新することができ、借りる側が希望する限りは半永久的にその土地を借り続けることができます。
一方の定期借地権は、契約満了の時点で契約は終了するため、更新はできません。たとえ借りる側と貸す側の双方の合意があった場合でも、更新できません。更新したい場合には、再度契約を結び直す必要があります。
❷ 権利金が発生するかしないか

「権利金」とは、不動産の賃貸借契約を結ぶ際に借地権を設定する対価として支払われるお金のことで、借りる側(賃借人)が貸す側(地主/賃貸人)に対して支払います。契約が終了しても、権利金は返還されません。
普通借地権では権利金が発生しますが、定期借地権では権利金は発生しません。定期借地権は普通借地権と比べて、そもそもの契約期間が短いためです。
【参考】権利金について詳しく解説
権利金と同様に借りる側が貸す側へ支払うお金として、敷金や礼金、保証金などがあります。これら4つは支払う目的や返還義務の有無が異なるため、以下の表を参考にしてください。
意味 | 返還義務の有無 | |
権利金 | 物件の対価 ※借地権設定時は「借地権を設定すること」への対価 | 返還義務なし |
敷金・保証金 | 未払賃料や原状回復を担保するためのお金 | 返還義務あり |
礼金 | 賃貸人へ払うお礼 | 返還義務なし |
❸ 地代の相場・借地権の価値

❸-1 地代の相場
一般的に地代(土地の使用料)は普通借地権よりも定期借地権の方が高くなります。
定期借地権では「権利金を支払う必要がない」と先述しましたが、権利金が無い代わりに毎月又は毎年の地代が高くなっています。
❸-2 借地権の価値
借地権の価値とは、借地権そのものを売買する際の売却価格のことを指します。借地権は土地を利用できる権利として経済的価値があるため、権利そのものを売買することが可能です。
借地権の価値は、定期借地権よりも普通借地権の方が高くなります。
普通借地権は「地代の安さ」「半永久的に借りることができるという安定性」の2つの観点から、高い価値が付きます。また定期借地権では、残存期間(残りの契約期間)が短くなればなるほど、土地を利用できる期間が短くなるため、借地権の価値は下がってしまいます。
【種類別に紹介】借地権が設定される実際のケース
普通借地権、定期借地権(一般定期借地権・建物譲渡特約付借地権・事業用定期借地権)の特徴や違いについて説明してきましたが、実際には各借地権がどのように使い分けされているのでしょうか。
借地権付き物件のメリット
そもそも借地権が設定されることで得られる最大のメリットは、物件価格が安いことです。例えば、借地権付きのマンションの場合、人気のある一等地に比較的安い価格で住むことができます。
普通借地権が設定されるケースは滅多にない
借地権には更新ができる普通借地権と更新ができない定期借地権がありますが、借地権が設定されるケースのほとんどは普通借地権ではなく定期借地権が設定されます。
普通借地権を設定する場合、地主は一度土地を貸してしまうと半永久的に取り返すことが難しくなり、大きなリスクが伴うためです。

貸す側(地主)にとって、普通借地権を設定するメリットはほとんどありません。
定期借地権が設定されるケース
一般定期借地権 | 分譲マンション、賃貸マンション、老人ホーム |
建物譲渡特約付借地権 | 倉庫や工場 ※ほとんど利用されていない |
事業用定期借地権 | コンビニ・スーパー・ドラッグストア・飲食店など |
3つの定期借地権の中で最も普及しているのは、事業用定期借地権です。
一般定期借地権


一般定期借地権は3つの中で最も存続期間が長いため、分譲マンションや賃貸マンションや老人ホームなど住居目的で設定されることが多いです。
特に借権付きの分譲マンションは通常(借地権無し)の分譲マンションよりも安く価格で購入することができ、近年注目を集めています。
建物譲渡特約付借地権


建物譲渡特約付借地権は、契約満了時に地主が借地上の建物を買い取らなければいけない旨が定められており、地主にとってメリットが無いことから、ほとんど利用されていないのが実態です。
しかし、稀に倉庫や工場として活用されているケースがあります。
事業用定期借地権


事業用定期借地権は、コンビニやスーパー、ドラッグストアや飲食店などで利用されています。
3つの中で最も契約期間が短く、利用目的が事業用であることから、貸す側からも借りる側からも需要が高いです。
注意: 畑や駐車場として利用する場合は普通借地権も定期借地権も適用されない
借地借家法で定められている借地権(普通借地権・定期借地権)が適用されるのは、建物の所有を目的として土地を借りる場合のみです。そのため、建物を建てずに利用する畑や駐車場には、借地借家法の規定は適用されません。
しかし、借地借家法が適用されないからと言って法律が無いわけではありません。借地借家法が適用されない賃貸借契約には、民法上のルールが適用されます。
まとめ
- 借地借家法で定められている借地権は「普通借地権」と「定期借地権」の2種類
- 普通借地権と定期借地権の違いは3つ
- 契約の更新できるかできないか
- 権利金が発生するかしないか
- 地代の相場・借地権の価値
- 普通借地権よりも定期借地権が主流(地主が普通借地権を設定するメリットは無い)