借地権は相続できる!相続人がすべきこと・地主の承諾や譲渡承諾料の要不要を解説

  • 借地権は相続できる?
  • 借地権を相続する際、地主の承諾は必要?
  • 借地権を相続したので、必要な手続き方法が知りたい!

借地権とは、建物を建てるために土地の所有者から土地を借りる権利のことを指し、地主に対して、土地の使用料(地代)を支払うことで土地を使用する権利を得ることができます。

一般的な土地や建物を相続する際と異なり、地主との契約関係を結んでいる借地権の相続では、地主とのやり取りや手続き方法に悩みを抱えている方が多くいらっしゃいます。

本記事では、そもそも借地権は相続できるのか、借地権の相続時に相続人がやるべきこと、地主の承諾の有無、具体的な手続き方法まで解説します。

記事監修者情報

株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士

不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。詳細はプロフィールをご覧ください。

借地権は相続できる

借地権は権利の一種であるため、相続ができます。土地や建物などの不動産と同様に扱うことができ、相続だけでなく相続放棄も可能です。※ただし、相続の開始を知った時から3か月以内に相続放棄をする必要がある

借地権は相続税の課税対象となる

相続ができる借地権は、他の相続財産と同じように相続税の対象となります。相続税の評価額は普通借地権と定期借地権で異なるため、詳細は国税庁のHP「借地権の評価」をご確認ください。

借地権を相続したら、相続人がやるべきことは2つ(稀に3つ)

では、借地権を相続したら、相続人は何をしなければならないのでしょうか?原則、相続人がやらなければならないことは以下の2つです。

  • 地主への報告
  • 借地上の建物の名義変更
  • 登記上の借地権の名義変更

例外として、借地権が登記されている場合は「①地主への報告」「②借地上の建物の名義変更」に加えて、「登記上の借地権の名義変更」が必要です。ただし、借地権が登記されているのは非常に稀なケースで、ほとんどの人は該当しません。

❶ 地主への報告 ※地主の承諾は不要

借地権を相続する場合、地主の承諾は必要ありません。しかし、地主への報告は必要です。相続により借地権を取得したことを地主へ連絡しましょう。

例えば「借地権を相続により取得しました○○(名前)です。」と連絡するだけで十分です。(対面でも電話でも可)

❷ 借地上の建物の名義変更

建物の名義変更とは、登記上の所有権を移転することです。借地上の建物の所有権を亡くなった方(被相続人)から相続人の名義に変更する必要があります。

たとえ親族から相続した場合でも、登記上の名義が自動的に変更されることはありません。不動産の所有権を巡ってトラブルになることもありますので、相続後は迅速に所有権移転登記の手続きを行いましょう。

所有権移転登記の手続き方法は、後ほど詳しく説明します。

相続により登記上の名義変更を行うことを「相続登記」と呼びます。
手続きの際によく出てきますので、覚えておきましょう。

【併せて確認】賃貸借契約書の名義変更は不要

貸主と借主の間で交わしている賃貸借契約書内の名義は変更する必要がありません。

相続人は亡くなった方の権利や債務をそのまま引き継ぐため、地主との契約内容も継承されます。

(借地権が登記されている場合のみ)❸登記上の借地権の名義変更

稀なケースではありますが、もし借地権が登記されていた場合は、登記上の借地権の名義変更が必要です。

借地権の名義変更も、「❷借地上の建物の名義変更」と同様に登記上の手続きとなるため、❷と併せて手続きをしておきましょう。

【相続とを比較】地主の許可や譲渡承諾料は必要?

「相続」と似た言葉として「遺贈(亡くなった方の遺言により、遺産を譲ること)」があります。財産をゆずるという意味では似ていますが、借地権の相続または贈与する上で異なる点がいくつかあります。

相続・遺贈(いぞう)とは?

相続とは、亡くなった方の財産を法定相続人が引き継ぐことです。※法定相続人:法律で定められた財産を相続できる人(配偶者や子、親など)

一方、遺贈とは、亡くなった方の遺言により、財産を法定相続人以外に譲ることです。遺贈する相手に特に制限はなく、お世話になった人や団体、法人にも遺贈することができます。

相続は地主の許可・譲渡承諾料は不要。ただし遺贈の場合は必要。

先述した通り、借地権を相続した場合、地主の許可は不要です。よって譲渡承諾料(名義変更料)も発生しません※譲渡承諾料:地主の承諾を取るために借主から地主へ支払われるお金、別名「名義変更料」

一方、法定相続人以外が遺贈によって借地権を手に入れた場合は、地主の許可が必要です。そして併せて譲渡承諾(名義変更料)も必要になります。

相続遺贈
地主の許可
不要必要
譲渡承諾料
不要必要

【参考】譲渡承諾料の相場

承諾料の相場は、借地権価格の10%程度です。以下の式で求めることができます。

譲渡承諾料=更地価格×借地権割合×10%

先述した通り、借地権を相続した場合、借地上の建物の所有権移転が必要になります。登記の名義変更手続きは自分自身で行うことができますが、複雑な手続きとなるため、司法書士へ依頼することがほとんどです。司法書士へ依頼することで、手間や時間を省けたり、専門的なアドバイスを受けられます。

ここでは、名義変更の大まかな手続きの流れを解説します。

戸籍関係書類の取得

相続の開始があったことの証明や法定相続人を特定するために、戸籍謄本・抄本、除籍謄本・抄本などの戸籍関係書類を取得します。

戸籍謄本・抄本、除籍謄本・抄本は、本籍のある市区町村に請求することで取得することができます。

登記申請書の作成

次に、法務局に提出する登記申請書を作成します。登記申請書は法務局HPより、様式をダウンロードし、パソコンまたは直筆で作成します。

項目別の詳細な書き方については、法務局「不動産登記の申請書様式について」をご確認ください。

▶添付書面の例

  • 登記原因を証する書面(戸籍謄本・抄本、除籍謄本・抄本)
  • 住所を証する書面(住民票の写し)
  • 登録免許税の納付を証明する領収証書または収入印紙
登記申請書を法務局へ提出する

申請方法は3つあり、法務局の窓口に直接持っていく方法、郵送での申請、オンラインでの申請です。登記・供託オンライン申請システム

提出先の法務局は、不動産の所在地を管轄する法務局です。法務局HP「管轄のご案内」→「地図から探す」から、管轄の法務局を探すことができますので、参考にしてください。

法務局から登記完了証を受け取る

無事に手続きが完了すると、法務局から「登録完了証」と「登記識別情報通知証」が交付されます。これらを受け取ることで全ての手続きが完了します。

本記事では、簡単な名義変更の流れを解説しました。実際に手続きを行う際は、以下法務局の登記手続ハンドブックをご覧ください。

まとめ

  • 借地権は相続できる、相続税の課税対象
  • 借地権を相続したら、相続人は「地主への報告」と「借地上の建物の名義変更」を行う必要がある。※借地権が登記されている場合のみ、「登記上の借地権の名義変更」が必要
  • 遺贈:亡くなった方の遺言により、財産を法定相続人以外に譲ること
  • 相続の場合、地主の許可や譲渡承諾料は不要。遺贈の場合、地主の許可や譲渡承諾料は必要。

記事監修者情報

株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士

不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。詳細はプロフィールをご覧ください。