造成とは?造成工事が行われるケースや判断方法を解説

  • 「土地の造成」って何が行われるの?
  • どのような場合に造成工事が必要になるの?
  • 造成が必要かどうか自分で判断する方法を知りたい…!

所有している土地を有効活用するためには、用途に合わせて整備する「土地の造成」が必要です。しかし土地の状況によって、造成が必要か否かが異なり、必ず土地の造成が必要というわけではありません。

そこで本記事では、そもそも「造成とは?」という用語解説から、造成工事が行われる3つのケース、造成が必要かどうかの判断方法まで説明します。

※造成の種類については、造成の種類は5種類|都道府県別の費用相場と失敗しない業者選びで解説しています。

記事監修者情報

株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士

不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。詳細はプロフィールをご覧ください。

土地の造成(ぞうせい)とは?

土地の造成とは、用途に合わせて土地を整備することです。

例えば「木々が生い茂った山地」を「住宅用の土地(宅地)」へと変更したい場合、そのままでは住宅を建てることはできません。まずは木々を根っこから撤去し、土地の凹凸を無くし平坦にする、その後地盤改良を行う、この一連の作業が土地の造成です。

造成は旧宅地造成等規制法(現:盛土規制法)に従って進めなければならず、工事ができる業者が限られています。

造成は個人やハウスメーカー・行政機関が行う

造成は個人が所有する土地で行われるだけでなく、ハウスメーカーや行政機関が依頼主となって行われることもあります。

個人の土地で造成を行うケース

  • 田や畑の地盤を強化し、宅地として活用するため
  • 山地近くの樹木が生えた傾斜面を更地にするため

個人以外で造成を行う代表的なケース

  • ハウスメーカーが土地一帯を買い占め、集合住宅を建設するため
  • 国土交通省が交通整備として道路を建設するため
  • 地方の行政機関が山地の土砂崩れを防ぐため

このように土地の造成は小規模のものから、企業や行政機関が主体となって進める大規模なものまで様々です。

宅地造成とは?

不動産取引では、「造成」よりも「宅地造成」という言葉がよく使われます。

宅地造成は「造成」の一種であり、農地や林地などを宅地にするため元の土地の形や質を変えることを指します。

名称言葉の意味造成後の用途
造成土地の形や質を変えるなどして、土地を整備する多用途
宅地造成宅地(住宅用の土地)

造成工事は宅地にすることを目的に行われるケースが多いため、「宅地造成」という言葉が不動産取引ではよく使用されます。

「宅地造成」は造成後の用途が”宅地(住宅)”に限定される点が大きな違いです。

参考:国土交通省は「宅地造成」を以下のように定義

宅地造成とは、宅地以外の土地を宅地にするため又は宅地において行う土地の形質の変更で政令で定めるもの(宅地を宅地以外の土地にするために行うものを除く。)をいう

旧宅地造成等規制法について/国土交通省

土地の造成の例(樹木の生い茂った傾斜地)

上記は「樹木の生い茂った傾斜地」での造成工事の例です。この場合の造成工事は以下の流れで行われます。

STEP
樹木を根元から取り除く

まずはブルドーザーやショベルカーなどの重機を用いて、樹木を根元から取り除きます。

根元から取り除くことができていないと再び生えてくる恐れがあるため、根の長さまで土を掘り起こしていきます。

STEP
傾斜面を削ったり盛ったりして、地面を平らにする

次に傾斜面を平らにするため、地盤面が高い箇所を削ったり、低い箇所には土を盛ったりします。

STEP
斜面の崩壊を防ぐため、擁壁をつくる

切土や盛土などで土地の高低差を調整すると、地面が崩壊する恐れが高くなるため、擁壁(コンクリートやブロックからなる壁)を作ります。

擁壁とは、側面の土が崩れるのを防ぐための壁状の構造物です。擁壁を作ることで、地面の崩壊を防ぐことができます。

STEP
地盤改良を行う

最後にその土地の強度を調べる地盤調査を行い、調査結果をもとに地盤改良を行います。

具体的には、表層部をセメントで固める方法、土の中にコンクリートや鋼の柱を埋め込む方法があります。特に宅地にする場合は、より強固な地盤にする必要があります。

「造成」は複数の工程によって行われることを覚えておきましょう。

土地の造成が行われる3つのケース

先述した通り、土地の造成は地盤の弱い田畑や傾斜面の土地を整備するため、さらには住宅や道路を建設するための手段として行われます。

ここでは、造成工事が必要となる具体的な3つのケースを説明します。

① 傾斜や高低差があるケース

傾斜地の上に建物を建設することはできないため、造成によって土地を平らにする必要があります。

代表的なケースとして山や崖の傾斜面が挙げられます。

②地盤が軟弱なケース

液状化や地盤沈下の恐れがあり、地盤を強化するために造成工事を行います。

代表的なケースとして田畑や埋め立て地などがあります。

③土地が変形しているケース

三角形やひし形の土地は区画整備がしにくく、活用しやすい四角形の土地にするために造成工事を行います。

造成が必要か否かの判断はどのように行う?

自身が所有している土地は、造成工事が必要かどうかわからない…

上記の3つのケースのように、所有している土地が山や崖に位置していたり、田畑や埋め立て地とわかれば、自分自身でも造成が必要だと判断することができます。

しかし、土地についての知識が十分でなかったり、土地の状況が曖昧な場合は、造成の必要があるかを判断することは難しいです。

そこで、造成が必要か否かを判断する方法は大きく2つです。

① ハザードマップを使って自分で調べる

国土交通省「重ねるハザードマップ」を利用することで、所有している土地の地盤について調べることができます。

「重ねるハザードマップ」とは?

国土交通省によって作られた地図で、防災に役立つ情報を全国どこでも1つの地図上に重ねて閲覧できる

重ねるハザードマップを用いて、「その土地で過去に盛土が行われているか」「埋立地かどうか」を確認することで、造成工事が必要かどうかを判断することができます。

調べる手順は以下の通りです。

  • 画面上部に土地の住所を入力し、検索する
  • 画面左の「すべての情報から選択」をクリックし、情報リストから「土地の特徴・成り立ち」を開く
  • 「大規模盛土造成地」を押し、黄緑色が表示された箇所は大規模盛土造成地とわかる
  • 「地形分類(人口地形)」を押し、ピンク色で表示された箇所は(小規模の)盛土・埋立地とわかる

上記の手順で確認し、「大規模盛土造成地」・「(小規模の)盛土」・「埋立地」のいずれかと確認できた場合、その土地はすでに盛土の造成工事が済んでいることになります。そのため、すぐに造成工事が必要になる可能性は低いです。

一方で該当しなかった場合も、造成工事が必ず必要になるというわけではありません。心配な場合は、専門家に相談することをお勧めします。

② 専門家に聞く

自分で調べてもわからなかった場合や正確な情報を知りたい方は専門家に相談することをお勧めします。

専門家には不動産業者や地盤品質判定士、自治体の窓口などが該当します。

不動産業者に聞く

土地を購入する際に仲介してもらった不動産会社や地元の不動産会社に「土地の開発履歴」について聞いてみましょう。その土地や周辺地域について詳しく知っている可能性があります。

地盤品質判定士に相談する

造成が必要かどうか判断するには、地盤品質判定士に相談することが最も正確でお勧めの方法です。

地盤品質判定士とは、地盤の品質を確認や評価して説明を行う地盤の専門技術者です。地盤品質判定士は、地盤の品質に関する地盤品質評価書を発行することができたり、安全のために最適な方法を提案してくれたりと、手厚い支援をしてくれます。

一般社団法人 地盤品質判定士会の公式HPには、一般の方向けの「宅地の地盤相談」メニューがあり、フォームから相談を申し込むことができます。

地盤品質判定士について詳しく知りたい方は一般社団法人 地盤品質判定士会の公式HPをご覧ください。

自治体の窓口で確認する

自治体の窓口には、その地域の土地の平面図や断面図が保管されており、地盤の情報について聞くことができます。また自治体によっては、地盤に関するセミナーや無料相談を実施しています。

まとめ

  • 土地の造成とは、用途に合わせて土地を整備すること
  • 宅地造成では、造成後の土地の用途が「宅地」に限定される
  • 造成工事が必要になる3つのケース
    • 傾斜や高低差がある
    • 地盤が軟弱である
    • 土地が変形している
  • 国土交通省「重ねるハザードマップ」を用いると「過去に盛土が行われたことがあるのか」「埋立地なのか」を見極めることができる
  • 造成工事が必要かどうかを正確に知りたい場合は専門家に相談すると良い

記事監修者情報

株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士

不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。詳細はプロフィールをご覧ください。