借地権の登記は不要!?登記のメリットや手続き方法・費用相場を解説

  • 借地権(賃借権)の登記は不要?義務ではない!?
  • 借地権を登記するメリット・デメリットは?
  • 登記の手続きの流れが知りたい!

借地権とは、建物を建てるために土地の所有者から土地を借りる権利です。地主に対して、土地の使用料(地代)を支払うことで土地を使用する権利を得ることができます。

また、借地権には「賃借権」と「地上権」の2種類がありますが、地上権は借りる側の権利が非常に強く、設定されることは滅多にありません。よって、本記事では借地権の中でも「賃借権」の登記について説明します。

本記事では、借地権(賃借権)の登記は義務なのか、貸す側と借りる側が登記するメリット・デメリット、登記の手続き方法や費用まで解説します。

本記事は「借地権の登記」の解説となります。

  • まずは借地権について知りたい方
  • 賃借権と地上権の違いを知りたい方

【図解】借地権とは?種類やメリット・デメリットをわかりやすく解説の記事をご覧ください。

記事監修者情報

株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士

不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。詳細はプロフィールをご覧ください。

【確認】そもそも不動産登記は何のためにするのか

不動産登記は、「土地や建物が誰のものなのか(所有権)」「誰が建物や土地を使う権利を持つのか(貸借権)」などの権利関係を証明する役割を果たします。

高額な財産である土地や建物の所在・面積・所有者の氏名などを誰もが見られる公の登記簿に記載することで、権利を誰に対しても主張でき、トラブルを回避することができます。

借地権(賃借権)の登記は義務ではない、建物の登記はした方が良い

借地権(賃借権)の登記は義務ではありません。登記はしてもしなくても大丈夫です。

借地権(賃借権)の登記をしなくてもよい理由は、借地権(貸借権)の登記が無くとも、借地上の建物の登記があれば、借地権を第三者に主張することができるためです。

簡単に言うと、不法占拠者(不法に土地を占拠している人)や全く関係のない第三者に対して「この土地は私が借りている!」と主張できるということです。

国土交通省が定める借地借家法では、以下のように定められており、借地権自体の登記が無くても権利を主張することができると記載されています。

借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる

借地借家法 第二節借地権の効力(借地権の対抗力)/国土交通省

【注意】借地権(賃借権)の登記をした方が良い場合もある

ただし、そもそも借地借家法が適用されない場合は、借地権を登記していないと第三者に権利を主張することができません。借地借家法が適用されない場合は以下の2つです。

  • 建物の所有を目的としていない場合(例:駐車場、資材置き場など)
  • 建物を無償で貸し借りしている(使用貸借の)場合

駐車場や資材置き場のように土地の上に建物が建っていない場合は、借地借家法が適用されません。また、友人から使用していない空き家をタダで譲り受けた場合も借地借家法は適用されず、登記を無くして第三者に「土地を借りている」旨を主張することができません。

上記のケースでは、そもそも借地借家法が適用されず、借地権を登記していないと権利を主張することができなくなってしまいます。

【参考】借地権(賃借権)の登記で記載される事項 ※覚えなくてOK

登記の項目は以下の通りです。

  • 登記の目的
  • 登記をした日付や順番
  • 賃料や賃料の支払期日
  • 契約期間
  • 権利者の氏名や住所

このように建物や土地について、登記簿上に詳細に記載しておくことで、権利関係を明確にすることができます。

【立場別に解説】借地権を登記するメリット・デメリット

借地権(賃借権)の登記は義務ではないことを先述しましたが、もちろん登記することもできます。そこで、登記することで貸す側と借りる側にはどのようなメリットがあるかを解説します。

貸す側(賃貸人/地主)のメリット

貸す側(賃貸人/地主)のメリットは、借地権の登記により、確実に土地を取り戻すことができる点です。

例えば、50年といった比較的長い期間で土地を貸し出している間に、賃貸借契約書を紛失してしまったとします。契約期間満了でいざ土地を返してもらおうと思った際に、契約書がなく、かつ借地権の登記もないと、そもそも50年間の賃貸借契約を証明する手段がありません。

このように万が一、賃貸借契約書を失くしてしまった場合でも、登記簿に賃貸借の記録が残っていれば、借地権の存在を証明することができ、確実に土地を取り戻すことができます。

相続などにより、借主が契約当初とは変わっていることもあるため、登記をしておくと安心です。

借りる側(賃借人/借主)のメリット

借りる側(賃借人/借主)のメリットは、想定外の事態でも確実に借地権を主張できる点です。

先述した通り、原則は登記が無くとも権利を主張することができますが、以下のよう想定外の事態では、登記が無いと権利が奪われてしまう可能性があります。

  • 土地の所有者(地主)が変わった場合(元の地主が他の人に土地を売却した場合)
  • 地主が二重に土地を貸し出していた場合
  • 不法占拠者がいた場合
  • 建物が滅失した場合

このように第三者(地主以外)が絡んだり、建物が火事や自然災害などにより滅失してしまった際に、登記をしていると確実に借地権を主張することができます。

貸す側と借りる側のデメリット:手続きの手間がかかる

貸す側も借りる側も借地権を登記することによるデメリットはほとんどありません。しかし強いて言うならば、手続きの手間や費用がかかる点がデメリットと言えます。

しかし、多額の費用がかかるわけではないため、自身の権利を守るためにも借地権を登記することをおすすめします

借地権(賃借権)登記の手続き ~申請方法・必要な書類を解説

登記の申請は、原則、貸す側(賃貸人)と借りる側(賃借人)が共同して行う必要があります。

また、登記の申請は面倒で複雑な手続きとなるため、自身で行うのではなく、司法書士へ依頼することが多いです。

申請方法は3種類

登記の申請方法は以下の3種類です。どの方法でも問題なく申請が可能ですが、必要書類の取得方法や手数料が異なりますので、詳細は各方式のリンクからご確認ください。

書面方式は窓口や郵送で申請し、オンライン方式では手続きが全てオンラインで完結します。事前提供方式は、書類によって書面方式とオンライン方式を使い分ける方法です。

本記事では、「書面方式」による手続きについて詳しく解説します。

登記に必要な書類

借地権の登記に必要な書類は、貸す側(賃貸人)と借りる側(賃借人)で異なります。

貸す側(賃貸人)が用意するもの

  • 賃貸借契約書
  • 印鑑証明書
  • 登記識別情報(権利証)
  • 固定資産評価証明書
  • 実印
  • 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
  • (司法書士に委託する場合)委任状

印鑑証明書、固定資産評価証明書は市区町村の役所で、登記識別情報は法務局で取得することができます。また、司法書士に委託する場合には、委任状が必要になります。

借りる側(賃借人)が用意するもの

  • 認印
  • 本人確認書類
  • (司法書士に委託する場合)委任状

借りる側(賃借人)が用意するものは以上の2つのみで、役所や法務局で取得しなければならない書類はありません。ただし、先ほど同様に司法書士に委託する場合には、委任状が必要になります。

借地権登記の手続き方法(書面方式)

申請書・添付書類を準備する

まずは先述した「登記に必要な書類」を準備し、併せて申請書を記入します。申請書は法務局HP(第2 登記申請の手続)よりダウンロードすることができます。※賃借権の登記の種類は「債権譲渡登記・質権設定登記」

登録免許税を納付する

申請する前に登録免許税(登記にあたって国に納める税金)の納付が必要です。具体的な費用については後ほど説明します。

法務局に申請する

申請方法は3つあり、法務局の窓口に直接持っていく方法、郵送での申請、オンラインでの申請です。登記・供託オンライン申請システム

提出先の法務局は、不動産の所在地を管轄する法務局です。法務局HP「管轄のご案内」→「地図から探す」から、管轄の法務局を探すことができますので、参考にしてください。

法務局から登記完了証を受け取る

無事に手続きが完了すると、法務局から「登録完了証」と「登記識別情報通知証」が交付されます。これらを受け取ることで全ての手続きが完了します。

本記事では、簡単な手続きの流れを解説しました。実際に手続きを行う際は、法務省:第2 登記申請の手続をご確認ください。

借地権(賃借権)登記にかかる費用・費用相場

借地権(賃借権)登記にかかる主な費用は「免許登録税」です。また、司法書士に手続きを委託する場合は「司法書士の委託報酬」も発生します。

ここでは、免許登録税と司法書士の委託報酬の2つについて説明します。

登録免許税

免許登録税とは、登記手続きを行う際に国に納める税金です。計算式は以下の通りです。

登録免許税額=固定資産税評価額×税率1%

※固定資産税評価額:各市区町村が土地や建物をどう評価するのかを定めた「固定資産評価基準」に基づいて決められた価格

【例】実際に登録免許税を計算してみよう

今回は固定資産税評価額を3,990万円(東京都の住宅地の平均固定資産税評価額)とします。

※3,990万円:105万円(土地1坪あたりの固定資産税評価額平均)×38坪(東京都内の戸建て平均坪数)

3,990万円×1%=39.9万円

登録免許税額は39.9万円となります。固定資産税評価額が高くなれば、それに従い登録免許税も上がっていきます。

司法書士の委託報酬(司法書士に手続きを依頼する場合)

司法書士の委託報酬は事務所や登記内容によって異なりますが、借地権登記の相場は3万円前後です。

所有権移転登記や相続による登記よりも比較的安く済みます。

まとめ

  • 借地権(賃借権)の登記は義務ではありません。登記はしてもしなくてもOK
  • 貸す側(貸主・地主)が登記するメリット:確実に土地を取り戻すことができる
  • 借りる側(借主)が登記するメリット:想定外の事態でも確実に借地権を主張できる
  • 登記の手続きは原則、貸す側(賃貸人)と借りる側(賃借人)が共同して行う必要がある

記事監修者情報

株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士

不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。詳細はプロフィールをご覧ください。